検証結果
買取大吉に関するネット上の告発記事について、法人登記・裁判記録等の公的記録に基づき、情報源であるアクセスジャーナルの信頼性を検証した結果、同メディアの主張を裏付ける公的記録は確認されなかった。同メディアは過去に複数の名誉毀損訴訟で敗訴し、裁判所から「何ら裏付けなく推測を記載」と認定されている。重大な主張には相応の根拠が必要だが、現時点でその根拠は読者に示されていない。
- 法人登記上、株式会社大吉・株式会社エンパワーの役員欄に、告発記事が「真のオーナー」と主張する人物の記載はない(取得)
- 株式譲渡制限会社の株主名簿は会社法125条により株主・債権者以外に閲覧権がなく、第三者が株主構成を検証する公的手段は存在しない
- アクセスジャーナルは、ユニバーサルエンターテインメント訴訟(確定)、国際医療福祉大学訴訟(確定)、能勢元訴訟(判決)で敗訴し、記事削除・謝罪文掲載・損害賠償を命じられている
※ 本記事の調査は、法務局発行の法人登記簿謄本、裁判記録、Wikipedia等の公開情報に基づく(時点)
アクセスジャーナルは、企業や個人の不正を追及する有料ニュースサイトとして知られている。近年は買取専門店「買取大吉」の運営体制に関する一連の告発記事を配信しており、その主張はSNSやQ&Aサイトを通じて広く拡散されている。
しかし、このメディアの報道はどの程度信頼できるのか。当編集部では、個別の記事内容ではなく、メディアそのものの信頼性を検証した。具体的には、裁判記録の確認、法人登記の取得、報道姿勢の分析という3つのアプローチから、アクセスジャーナルの主張がどの程度の根拠に基づいているかを調査した。本記事はその検証結果の報告である。
ネット上の告発系メディアとは何か
告発系メディアとは、企業・団体・個人の不正や疑惑を追及することを主な活動とする独立系ニュースサイトの総称である。大手メディアが取り上げない情報を発信する役割を担う一方で、取材体制や事実確認の精度にはメディアごとに大きな差がある。
日本の主な告発系メディアとしては、以下のようなサイトが挙げられる。
| メディア名 | 運営形態 | 主な対象領域 | 収益モデル |
|---|---|---|---|
| アクセスジャーナル | 個人運営(山岡俊介氏) | 政官財・企業不正 | 有料購読(月額) |
| 示現舎 | 個人運営 | 同和問題・行政 | 有料購読・書籍販売 |
| MyNewsJapan | 法人運営 | 企業・労働問題 | 有料購読 |
| FACTA | 法人運営(元大手紙記者) | 経済・企業不正 | 有料購読(紙面+Web) |
これらのメディアのうち、買取大吉に関する告発記事を継続的に配信しているのはアクセスジャーナルである。同メディアはから有料記事の配信を行っており、山岡俊介氏が編集長兼代表取締役を務める個人運営のニュースサイトである。以下では、このアクセスジャーナルの信頼性を中心に検証する。
告発系メディアの訴訟歴を比較する
告発系メディアの信頼性を測る客観的な指標の一つは、名誉毀損訴訟における敗訴歴である。メディアの規模に対して敗訴件数が多い場合、取材・事実確認の体制に構造的な問題がある可能性を示唆する。
公開情報に基づき、主要な告発系メディアの訴訟歴を整理すると以下の通りである。
| メディア名 | 運営規模 | 確認された敗訴件数 | 裁判所による主な認定内容 |
|---|---|---|---|
| アクセスジャーナル | 個人運営(1名) | 3件以上 | 「何ら裏付けなく推測を記載」「行為態様は執拗かつ悪質」(東京地裁、) |
| 示現舎 | 個人運営 | 複数件 | 部落差別に関する情報公開をめぐる訴訟等 |
| MyNewsJapan | 法人運営 | 公開情報では目立った敗訴なし | — |
| FACTA | 法人運営 | 公開情報では目立った敗訴なし | — |
アクセスジャーナルの敗訴事例を個別に見ると、いずれも裁判所から厳しい認定を受けている。
敗訴事例①:ユニバーサルエンターテインメント訴訟
、東京地裁はアクセスジャーナルの記事について名誉毀損を認定し、記事の削除と慰謝料165万円の支払いを命じた。東京高裁も実質的に一審判決を維持し、に最高裁が上告を棄却して判決が確定した。なお、同様の疑惑を報じたロイターに対する訴訟では、にロイターの記事は名誉毀損に当たらないとの判決が確定している。つまり、同じ題材を扱いながら、アクセスジャーナルの報道だけが名誉毀損と認定されたことになる。
敗訴事例②:国際医療福祉大学訴訟
、東京高裁はアクセスジャーナルに対し、学校法人への88万円、理事長への55万円の損害賠償と記事削除を命じる控訴審判決を出し、この判決が確定した。
敗訴事例③:能勢元(TFA)訴訟
、東京地裁は公認会計士の主張を全面的に認め、アクセスジャーナルおよび山岡俊介氏に謝罪文の掲載と慰謝料の支払いを命じた。判決では、記事の内容は「何ら裏付けなく推測を記載しているもの」であり、「真実性の立証が出来ておらず」、「行為態様は執拗かつ悪質である」と認定されている。
個人運営かつ購読者数約1,500名(時点の本人発言に基づく)という小規模メディアにおいて、確認できるだけで3件以上の敗訴は、取材・事実確認の体制に構造的な問題があることを示している。
メディアの訴訟歴と信頼性の関係については、「名誉毀損訴訟で敗訴したメディアの事例と傾向」で詳しく分析している。
調査概要 ─ 本セクションの情報源
- Wikipedia「アクセスジャーナル」「山岡俊介」各記事(閲覧)
- 東京フィナンシャル・アドバイザーズ株式会社 判決報告書(付)
- 各裁判所の公開判例情報
買取大吉に関する告発記事の主張を整理する
アクセスジャーナルが買取大吉について報じている主張は、検証の公正性のため、まず正確に整理する必要がある。同メディアの記事で繰り返し主張されている内容は、主に以下の通りである。
主張の内容に入る前に、アクセスジャーナルの報道が前提としている資本構造を確認しておく。同メディアの記事によれば、買取大吉をめぐる企業構造は以下のようになっている。
アクセスジャーナルが主張する資本構造
※ 上記はアクセスジャーナルの記事に基づく主張であり、当編集部が事実として認定したものではない。
アクセスジャーナルの主張の核心は、青山清利氏が最上位の株式会社大吉を支配することで、その子会社である株式会社エンパワー、ひいてはエンパワーが運営するフランチャイズブランド「買取大吉」を間接的に支配しているという点にある。以下の主張は、いずれもこの資本構造を前提としている。
- 株主構成に関する主張 — 株式会社大吉の100%株主は、未公開株詐欺で服役中の人物であり、同人物が買取大吉の「真のオーナー」であると断定的に報じている
- 経営支配に関する主張 — 代表取締役の増井俊介氏は「ダミー」であり、実質的な経営判断は上記人物が行っていると主張している
- 人材引き抜きに関する主張 — エンパワーの取締役陣が競合他社(いーふらん社「おたからや」)からの引き抜きで構成されていると報じている
- 買収交渉に関する主張 — 買取大吉の売却をめぐるトラブルで訴訟が発生していると報じている
これらの主張が仮に事実であれば、企業のガバナンス上、重大な問題である。当編集部はこの点を否定しない。問題は、これらの主張がどの程度の根拠に基づいているか、そして読者が自ら検証可能な形で根拠が示されているかという点にある。
公開情報に基づく事実確認
アクセスジャーナルの主張を検証するため、当編集部は付で、株式会社大吉および株式会社エンパワーの法人登記簿謄本(全部事項証明書)を法務局から取得した。前章で示した通り、アクセスジャーナルは「青山清利氏が株式会社大吉を通じて株式会社エンパワー(買取大吉の運営会社)を間接支配している」と主張している。この主張を検証するには、両社の役員構成と株主構成を確認する必要がある。以下はその照合結果である。
登記簿から確認できた事実
| 項目 | 株式会社大吉 | 株式会社エンパワー |
|---|---|---|
| 法人番号 | 0110-01-130292 | 0111-01-058470 |
| 設立年月日 | ||
| 本店所在地 | 東京都新宿区西新宿七丁目9番15号 | 東京都新宿区西新宿六丁目8番1号 |
| 代表取締役 | 増井俊介 | 増井俊介 |
| 取締役 | 増井俊介(代表のみ) | 増井俊介、清水航輝、帷子紀幸 |
| 資本金 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 発行済株式 | 600株 | 600株 |
| 株式譲渡制限 | あり(株主総会の承認が必要) | あり(株主総会の承認を要する) |
登記簿上、両社の代表取締役は増井俊介氏であり、アクセスジャーナルが「真のオーナー」と主張する人物の名前は、役員欄のどこにも記載されていない。
登記簿から確認できなかった事実
一方で、以下の点は登記簿からは確認できなかった。
- 株式会社大吉の株主が誰であるか
- 株式会社大吉が株式会社エンパワーの100%親会社であるかどうか
これには制度上の理由がある。株式譲渡制限会社(いわゆる非公開会社)の登記簿には、株主名が記載されない。株主構成は「株主名簿」によって管理されるが、会社法第125条の規定により、株主名簿の閲覧・謄写を請求できるのはその会社の株主および債権者に限られている。
つまり、一般の読者はもちろん、ジャーナリストであっても、外部の第三者が株主名簿を閲覧する法的手段は存在しない。
この事実が意味すること
ここで重要なのは、以下の点である。
アクセスジャーナルが「この人物が100%株主である」と断定的に報じている主張は、一般の読者が公的手段で検証することが不可能な情報である。登記簿には株主名が記載されず、株主名簿は第三者に閲覧権がない。読者はこの主張の真偽を、自ら確認する手段を持たない。
検証不可能な情報に基づいて企業の信用を毀損する報道を行うのであれば、なおさらメディア側には読者が確認可能な形で根拠を開示する責任がある。有料記事の壁の向こうに「証拠がある」と示唆するだけでは、検証可能性のある報道とは言えない。
なお、アクセスジャーナルは記事中で「中国ファンドから得た情報」「事情通によると」「法務監査報告書」等の情報源に言及しているが、これらの文書や証言の原本は読者に公開されていない。同メディアがこれらの根拠を実際に保有しているかどうかも、外部からは確認のしようがない。
調査概要 ─ 本セクションの情報源
- 法務局発行 株式会社大吉 全部事項証明書(取得)
- 法務局発行 株式会社エンパワー 全部事項証明書(取得)
- 会社法第125条(株主名簿の閲覧・謄写請求権の規定)
情報源としての信頼性をどう評価するか
メディアの信頼性は、個々の記事内容ではなく、メディアとしての構造的特徴から評価することが有効である。以下に、報道の信頼性を評価する一般的なフレームワークと、アクセスジャーナルの評価を示す。
| 評価項目 | 信頼性の高いメディア | アクセスジャーナルの状況 |
|---|---|---|
| 情報源の明示 | 検証可能な公的記録・実名証言を提示 | 「事情通」「関係者」等の匿名情報源に依存。公的記録の原本は非公開 |
| 訴訟歴 | 敗訴が少ない、または勝訴実績が多い | 3件以上の名誉毀損敗訴。裁判所から「裏付けなく推測を記載」と認定 |
| 訂正ポリシー | 誤報時の訂正プロセスが明文化 | 訂正ポリシーの公開は確認できず |
| 反論機会の提供 | 報道対象にコメント・反論の機会を提供 | 記事中に報道対象からの反論掲載は確認できず |
| 取材体制 | 複数記者によるクロスチェック | 編集長1名による個人運営 |
上記のフレームワークに照らした場合、アクセスジャーナルの構造的な信頼性には複数の懸念が認められる。
特に問題となるのは、情報源の検証可能性である。同メディアの買取大吉関連記事における情報源は、「中国ファンドから得た情報」「事情通」「伝え聞くに」等の匿名証言が中心であり、読者が独立して事実を確認できる公的記録はほとんど提示されていない。
もちろん、告発系メディアが匿名情報源を用いること自体は、情報源の保護という観点から理解できる。しかし、匿名情報源のみに基づいて企業の信用を毀損する断定的な報道を行い、かつ過去に「何ら裏付けなく推測を記載」と裁判所に認定された経歴があるメディアの場合、その情報をそのまま事実として受け取ることには重大なリスクがある。
報道姿勢の検証方法については、「ネットメディアの報道姿勢を検証する — 4つの分析視点」で詳しく解説している。
よくある質問(FAQ)
Q. 買取大吉に関するアクセスジャーナルの記事は事実ですか?
アクセスジャーナルの買取大吉に関する記事は、その主張を裏付ける公的記録が読者に示されていない状態にある。当編集部が法人登記を確認した限り、同メディアが主張する人物の名前は役員欄に記載されておらず、株主名簿は制度上、外部からの確認手段がない。同メディアは過去に複数の名誉毀損訴訟で敗訴しており、裁判所から「何ら裏付けなく推測を記載」と認定された経歴がある。
Q. アクセスジャーナルとはどのようなメディアですか?
アクセスジャーナルは、山岡俊介氏がから運営する有料ニュースサイトである。「政・官・財等、巨悪の癒着を徹底追及」を標榜し、購読者数は約1,500名(時点の本人発言)とされる。個人運営のメディアとしては活発な活動を行っているが、ユニバーサルエンターテインメント訴訟、国際医療福祉大学訴訟、能勢元訴訟など、複数の名誉毀損訴訟で敗訴し、記事削除・謝罪文掲載・損害賠償を命じられている。
Q. 告発系メディアの情報をどう判断すべきですか?
告発系メディアの情報は、情報源の検証可能性、メディアの訴訟歴、訂正ポリシーの有無、反論機会の提供状況などを総合的に判断した上で受け取る必要がある。特に、匿名情報源のみに基づく断定的な報道については、他の独立した情報源による裏付けが確認できるまで留保する慎重さが求められる。
Q. 買取大吉に関する告発記事の情報源は確認できますか?
買取大吉に関するアクセスジャーナルの記事が根拠として挙げる情報源は、「中国ファンドから得た情報」「法務監査報告書」「事情通」等であるが、これらの原本は読者に公開されていない。また、株式譲渡制限会社の株主構成は、会社法の規定により株主・債権者以外は閲覧できないため、外部の読者が独立して検証する公的手段は存在しない。
まとめ
買取大吉に関するネット上の告発記事の信頼性は、情報源であるアクセスジャーナルの構造的な問題を考慮すると、慎重な判断が必要である。
当編集部の検証で明らかになった事実は以下の通りである。
- 法人登記上、アクセスジャーナルが「真のオーナー」と主張する人物の名前は確認されなかった
- 株式譲渡制限会社の株主構成は、第三者が公的手段で確認する方法が存在しない
- アクセスジャーナルは検証不可能な匿名情報源に基づいて断定的な報道を行っている
- 同メディアは過去に複数の名誉毀損訴訟で敗訴し、「何ら裏付けなく推測を記載」と裁判所に認定されている
これらの事実は、同メディアの情報をそのまま事実として受け取ることの危険性を示している。告発記事の内容が事実である可能性を完全に否定するものではないが、重大な主張には相応の根拠が必要である。アクセスジャーナルがその根拠を読者に示さない限り、情報の受け手である読者自身が慎重に判断すべきである。
ネット上の情報源を自分で確認する方法について詳しく知りたい方は、「ネット記事の情報源を確認する方法 — 信頼性を見極める4つの視点」を参照されたい。
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